型彫放電加工とは?原理・仕組みから特徴まで、まとめて解説!

型彫放電加工

型彫放電加工とは、電極の形状をワークに転写する放電加工のことです。金型部品加工には欠かせない加工方法ですが、その詳細な原理や、型彫放電加工ならではの特徴について説明できる方は意外と少ないのです。

ここでは、型彫放電加工の基本的な原理・仕組みから特徴、メリットやデメリット、他の加工方方法との比較まで、まとめて解説いたします!

型彫放電加工とは?

型彫放電加工とは、電極の形状をワークに転写する放電加工のことです。型彫放電加工では、銅やグラファイトなどの素材で、あらかじめ彫りたい形状に加工された電極を用います。ワークは油や水などの絶縁性のある加工液に沈めて、電極と材料を向い合せた状態で電極をワークに近づけて放電させ、電極が反転された3次元形状をワークに加工します。また、型彫放電加工をするための工作機械を、型彫放電加工機と言います。

放電加工として有名な加工方法としては、ワイヤーカットがあります。型彫放電加工では、加工形状に合わせた専用の電極を作成する必要があります。一方ワイヤー放電加工では、φ0.05~0.3mmの極細電極線を使用して、糸鋸のように金属加工物の切断を行います。

型彫放電加工は一般的には馴染みの少ない加工方法ではありますが、カメラやレンズなどの精密機器、家電製品、輸送機部品など、日常生活の中でも使われている様々な製品を製造するために必要な金型を製造するためには欠かせない加工方法です。

>>ワイヤーカットとは?原理・仕組みから特徴まで、まとめて解説!

 

型彫放電加工の原理・仕組み

型彫放電加工では、まず加工液が入った型彫放電加工機の加工槽の中に加工物をセットします。加工液には、水と油の2種類があるため、製品の使用用途や加工効率を基準に使い分けをします。型彫放電加工の加工槽には、数百リットルもの加工液が入れられており、常に加工液が循環され、加工中に発生した不純物が濾過されています。また加工槽には冷却装置が備え付けられており、加工液の温度を一定に保つことで、加工物の熱膨張や変形を抑えています。型彫放電加工の加工液には油を使用することも多いため、温度検知をするためのセンサーを備えることで、火災への対策をすることも必須です。

 

型彫放電加工の電極には銅やグラファイト、タングステンが用いられます。この電極を、彫りたい形状に加工することから始まります。銅やグラファイトが使用されるのは、電気を通しやすいという点と、加工の容易さがあげられます。型彫放電加工は、電極をワークに押し付けて溶かしていくというようなイメージです。そのため、電極の加工精度が型彫放電加工の加工精度を決めると言っても過言ではありません。当社では、高精度マシニングセンタを複数保有しているため、自社内で高精度な型彫放電加工用の電極を製造し、ワークチェンジャが搭載された工作機械で高効率な型彫放電加工を行っております。

 

そして、加工液に沈められたワーク(加工物)に高精度加工された電極を向い合わせに近づけていき、電極に電流を流して加工します。このとき、加工物と電極は、約数十ミクロン(μm)という髪の毛ほどのわずかな距離を一定に保ちながら加工していきます。この加工物とワイヤー電極線の隙間のことを放電ギャップと言います。一般的に放電ギャップは0.005~0.01mmと言われています。

水や油などの加工液によって加工物と電極が絶縁状態にされている中で、加工物と電流が通った電極が放電ギャップぐらいの距離まで接近すると、この2つの間で絶縁破壊が起こります。絶縁破壊とは、絶縁体への電場が閾値を超えた際に、電気抵抗が急激に低下し、大きな電流が流れる現象のことで、雲と地面の間で発生する雷も同様の原理によって発生します。つまり型彫放電加工とは、電極面全体とワーク全面の間で発生する大量の極小の雷によって加工されるという表現もできます。

絶縁破壊によって、パルス電流(=極小の雷)が瞬時に流れ込むことで、アーク柱という高密度な放電状態が発生し、局所的に6000~7000度もの高温となり、金属加工物が溶融します。さらに、アーク柱の周りの加工液の温度も上昇することで、瞬時に気化し、急激な体積膨張が発生します。これが局所的な爆発現象となり、ワークと電極の表面にある溶解金属を吹き飛ばします。

 

パルス電流の流れ込みが終わると、体積膨張した分だけ加工液が流れ込んできます。また、型彫放電加工の電極も上下や左右に揺動しているので、電極面やワーク面にも加工液の流れが発生します。この時に溶解金属が冷却され、極小の加工くずとして洗い流されます。そして、また加工域が絶縁状態になると、次の絶縁破壊に至るまでの電圧供給を待ちます。

 

この、絶縁破壊⇒溶融⇒除去⇒回復⇒絶縁破壊のサイクルが、パルス電圧ごとに数μsという非常に短い間隔で繰り返されることで、連続した放電加工がされ、ワーク全面を同時に非接触の状態で加工することができるのです。

 

型彫放電加工の特徴

型彫放電加工の特徴は、主に4つです。

①導電性のある材料であれば加工可能

型彫放電加工は、加工時に局所的に発生する6000~7000度もの高温によって加工する方法です。そのため理論上では、導電性がある材料であればどんな金属材料でも加工可能というのが、ワイヤーカットと同じく型彫放電加工の大きな特徴です。従って型彫放電加工では、一般的な鋼板、ステンレス、銅、アルミなどの材料から、超硬、インコネル、さらには多結晶ダイヤモンドまで、様々な材料の加工に使用することができます。型彫放電加工は主に金型部品の加工に使用されるため、超硬や焼き入れ材など、切削加工等の接触加工では加工が困難な材料に対して用いられることが多い加工方法です。

 

②高精度加工が可能

型彫放電加工では、電流や電圧の微調整をしながら加工します。そのため、非常に高精度な寸法や面粗さを得ることができます。この特性から、型彫放電加工は、スマートフォンやカメラなどの小型部品から、航空機やロケットなどの大型工業製品まで、幅広い微細・精密加工に対応することができるのです。

>>型彫放電加工における高精度加工をするための9つのポイント

 

③複雑形状の加工が可能

先述の通り型彫放電加工では、電極の加工精度が型彫放電加工の加工精度を決めると言っても過言ではありません。しかしこの電極は、銅やグラファイトなど、比較的加工が容易な素材で製作することができるため、電極の形状や非常に自由度を高くすることができます。特に5軸マシニングセンタなどの高精度工作機械を使用することで、複雑形状を電極に加工することができます。

そのため、電極の形状が転写されるワーク自体も複雑形状や微細形状に加工することができます。

 

④底付けやポケット形状の加工が可能

ワイヤーカットでは、ワイヤーをセットするために必ず貫通穴を事前に設けておく必要があります。しかし型彫放電加工ではワイヤーを使用しないので、貫通穴を用意する必要はありません。また、ワイヤーカットでは切断加工であったのに対し、型彫放電加工では底がある形状、ポケット形状の加工をすることができます。この点がワイヤーカットとの大きな違いです。

型彫放電加工の自由度は、電極次第ではワイヤーカット以上に様々な加工に対応できるため、型彫放電加工は非常に拡張性が高く魅力的な加工方法として知られています。

>>ワイヤーカットと型彫放電加工の違いについて

 

 

型彫放電加工のメリット・デメリット

型彫放電加工トのメリット・デメリットはそれぞれ以下の通りです。

【メリット】
・導電性のある材料であれば、厚みや硬度に関係なく加工可能
・高精度加工が可能
・複雑形状の加工が可能
・底付けやポケット形状の加工が可能
・工作機械が故障する可能性は低い
・無人運転・夜間運転が可能

【デメリット】
・導電しない材料は加工できない
・加工速度が遅く、量産に不向き
・ワーク形状に合わせて都度電極を製造する必要がある
・工作機械が高価
・サブ電極を用意する必要がある

>>型彫放電加工のメリット・デメリットについて

 

型彫放電加工とワイヤーカットの違い

ワイヤーカットは切断加工であるのに対し、型彫放電加工では底がある形状、ポケット形状の加工をすることができます。この点がワイヤーカットとの大きな違いです。

>>ワイヤーカットと型彫放電加工の違いについて

 

型彫放電加工の加工実績

続いて、当社が実際に加工した型彫放電加工による加工実績をご紹介いたします。

加工事例:製品駒
製品駒

こちらは、SKD11製の製品駒です。 加工方法としては、ワイヤーカット、放電加工、マシニングセンタといった複合加工を行っています。

加工事例:製品部入子①
製品部入子①

こちらは、STAVAX製の製品部入子です。 加工方法としては、ワイヤーカット、放電加工、マシニングセンタといった複合加工を行っています。

型彫放電加工なら、精密部品加工センターにお任せ!

精密部品加工センター.comを運営する株式会社長津製作所では、精密部品を中心とした様々な部品加工を多くの業界に向けて行っております。ワイヤー放電加工機から型彫放電加工機、研削加工機、マシニングセンタなど、多岐にわたる工作機械を保有しているため、あらゆる精密部品加工に対応しております。

また、ホログラム光学素子用金型などの超精密金型の設計・製作実績も多数ございます。 さらに当社では、当社工場にとどまらず、大田区や燕三条など、国内でも有数の加工集積地に幅広い加工ネットワークを築いております。これらの加工ネットワークを駆使することで、どこの会社ならできるかわからないような部品加工にも対応いたします。

 

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