型彫放電加工における高精度加工をするための9つのポイント

型彫放電加工

型彫放電加工では、電極の加工精度が型彫放電加工の加工精度を決めると言っても過言ではありません。しかしそれ以外にも、型彫放電加工をする上では、加工条件や加工環境にも、細かいノウハウが必要となってきます。

ここでは、型彫放電加工における高精度加工をするための9つのポイントについて、まとめて解説いたします!

型彫放電加工とは?

型彫放電加工とは、電極の形状をワークに転写する放電加工のことです。型彫放電加工では、銅やグラファイトなどの素材で、あらかじめ彫りたい形状に加工された電極を用います。ワークは油や水などの絶縁性のある加工液に沈めて、電極と材料を向い合せた状態で電極をワークに近づけて放電させ、電極が反転された3次元形状をワークに加工します。

>>型彫放電加工とは?原理・仕組みから特徴まで、まとめて解説!

 

型彫放電加工では、電極形状の自由度を非常に高くすることができます。そのため、電極の形状が転写されるワーク自体も複雑形状や微細形状に加工することができます。エンドミル等では加工が困難な溝形状、コーナー等の複雑な形状も加工することができるのは、型彫放電加工の大きなメリットです。

>>型彫放電加工のメリット・デメリットについて

 

また、ワイヤーカットは切断加工であるのに対し、型彫放電加工では底がある形状、ポケット形状の加工をすることができます。この点がワイヤーカットとの大きな違いです。

>>ワイヤーカットと型彫放電加工の違いについて

 

型彫放電加工における高精度加工をするための9つのポイント

それでは、型彫放電加工における高精度加工をするためのポイントについて解説いたします。

 

①段階を踏んで、粗⇒中⇒仕上げ加工をする

まずは、段階を踏んで加工をするという点です。この方法はワイヤーカットでも共通しており、部品加工業者の中では当たり前の方法とも言えます。当社の場合では、粗から仕上げまで、10工程ほどの段階を踏んで加工しておりますが、こうすることで初めて高精度な加工品を得ることができます。

 

②加工条件(電流の強さ)を調整する

続いて、型彫放電加工の電極に流す電流の強さを調整する方法です。①の段階を踏んで加工する方法と共に採用される、型彫放電加工における高精度加工方法の常套手段とも言えます。最初は強めの電流を流し、加工速度が早めな粗加工として済ませる。そして仕上げでは弱い電流で送り速度を遅くして加工する、という方法です。

 

③C軸を合わせる

水平方向、高さ方向のX,Y,Z軸は、ワークを取り付けた後に芯だしをするため、あまり重要ではありません。しかしC軸を合わせることは、型彫放電加工においては重要なポイントとなります。C軸は、Z軸を中心として回転する軸です。C軸がずれてしまうと、ワーク全体から角度がずれた放電加工面が形成されてしまったり、ネジ切り加工が上手くいかなくなってしまいます。

C軸はワーク取り付け後には設定しづらいため、ワーク設置前に設定する必要があります。

 

④揺動・振動パターンを形状に合わせて選択する

型彫放電加工では電極を揺動・振動させながら加工させますが、加工形状にあわせて揺動・振動パターンを選択することも大切です。例えば、角出しが2次元形状の場合は、無駄に3次元形状にすることなく、シンプルに2次元方向のみの揺動で十分であり、その方が高精度加工をすることができます。一方、製品形状が3次元の場合では、2次元の揺動のみでは不十分となり、3次元で揺動させる必要があります。また、3次元形状の中にも様々な形状があるため、求めるワークの形状にあわせて適切な揺動パターンを選択する必要があります。

 

⑤Z軸の上昇速度や回数を調整する

型彫放電加工機において、電極が搭載されているZ軸の上昇速度や回数を調整することも、型彫放電加工の高精度加工においては必要なノウハウです。電極を上昇させる際には、電極面周辺、つまり加工面周辺に加工液の流れが発生します。これにより、加工くずが排出されるようになります。

例えば、Z軸の上昇スピードを、下降スピードと同じ速度にするのか、その2倍にするのかでは、加工液の流れの作られ方も変わります。同様に、どれくらいの高さまで上昇させるのか、10回放電してから2回上昇させるなど、かなり細かい調整が必要となります。

 

⑥噴流で流れを作る

型彫放電加工のデメリットは、加工くずが電極に付着したり、加工面に溜まってしまい、加工が進まなくなる点があげられます。また、電極に加工くずが付着することで、電極形状が変わってしまい、転写されるワーク形状も精度が悪くなってしまいます。

そのため、型彫放電加工中は常にノズルで噴流をかけますが、この噴流のかけ方にも工夫する必要があります。噴流で加工面全体で流れを作るようにノズルを設置することで、加工くずが溜まりにくくなり、電極への付着具合を抑えることができます。

 

⑦メーカーごとに放電加工機を使い分ける

メーカーによっても、型彫放電加工機の特徴は異なります。そのため、使用用途に沿って型彫放電加工機を使い分けることも、高精度加工においては必要なことなります。

当社ではソディック製の型彫放電加工機「AQ35L」はゲート加工に、牧野フライス製「EDAF3、EDAC1、EDGE3S、EDGE2S」は全般加工や補正に、三菱電機製「MA2000」にはワークチェンジャが搭載されているため、ロット数が多い物や細かいものを加工するために使用しております。それぞれのメーカーの工作機械の強みを生かすことが、型彫放電加工の高精度加工につながるのです。

 

⑧最適な電極材料を選ぶ

電極の材料は様々ありますが、加工するワークに合わせて最適な電極材料を選択することも型彫放電加工の高精度加工において重要なポイントとなります。

例えばグラファイトは電極形状の加工は容易ですが、電極の摩耗が速いため、仕上げ加工には向いていません。一方銅タングステンなどの材料は、電極形状の加工自体が非常に難しいものの、その分電極の摩耗はしにくく、形状が崩れにくいため、仕上げ加工に向いている電極となります。

このように、工程ごとに最適な電極を選定して使用することは、型彫放電加工の高精度加工においては欠かせません。

 

⑨高精度な型彫放電加工用の電極を製造する

型彫放電加工では、電極の加工精度が型彫放電加工の加工精度を決めると言っても過言ではありません。つまり、結局のところは高精度な電極を製作することができなければ、どんなに完璧な条件設定をしたとしても、高精度なワークを得ることはできないのです。

そのため、高精度な型彫放電加工をサプライヤーに依頼する際は、高精度な電極を製造することができる設備があるかどうかが判断材料であると言えます。

当社では、高精度マシニングセンタを複数保有しているだけではなく、超精密加工用の設備も社内に保有しており、他社ではできない精度の加工であっても高効率に対応することができます。

 

 

まとめると、加工条件、加工環境、電極の3点が、型彫放電加工の高精度加工におけるポイントとすることができます。

 

型彫放電加工の加工実績

続いて、当社が実際に加工した型彫放電加工による加工実績をご紹介いたします。

加工事例:製品駒
製品駒

こちらは、SKD11製の製品駒です。 加工方法としては、ワイヤーカット、放電加工、マシニングセンタといった複合加工を行っています。

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加工事例:製品部入子①
製品部入子①

こちらは、STAVAX製の製品部入子です。 加工方法としては、ワイヤーカット、放電加工、マシニングセンタといった複合加工を行っています。

型彫放電加工なら、精密部品加工センターにお任せ!

精密部品加工センター.comを運営する株式会社長津製作所では、精密部品を中心とした様々な部品加工を多くの業界に向けて行っております。ワイヤー放電加工機から型彫放電加工機、研削加工機、マシニングセンタなど、多岐にわたる工作機械を保有しているため、あらゆる精密部品加工に対応しております。 また、ホログラム光学素子用金型などの超精密金型の設計・製作実績も多数ございます。 さらに当社では、当社工場にとどまらず、大田区や燕三条など、国内でも有数の加工集積地に幅広い加工ネットワークを築いております。これらの加工ネットワークを駆使することで、どこの会社ならできるかわからないような部品加工にも対応いたします。

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