ワイヤーカットのメリット・デメリットについて

製品部入子①

ワイヤーカットは、部品加工には多用される加工方法ですが、どのように他の加工方法と使い分ければいいのかは、実は判断が難しい場合もあります。

ここでは、ワイヤーカットと他の加工方法を比較した上での、メリットとデメリットを解説し、どのような場合にワイヤーカットを選択すればいいのか、まとめて解説いたします!

ワイヤーカットとは?

そもそもワイヤーカットとは、どのような加工方法でしょうか?

ワイヤーカットとは、正式にはワイヤー放電加工と言われる放電加工の一種で、真鍮などのワイヤー線に電流を流して加工物を溶融させながら切断する加工方法です。ワイヤー線には、主に真鍮製のワイヤー線が使用されますが、タングステンやモリブデン製の電極線もございます。また、ワイヤーカットをするための工作機械を、ワイヤー放電加工機と言います。

ワイヤーカットは一般的には馴染みの少ない加工方法ではありますが、様々な製品の金型部品、家電製品、輸送機部品など、日常生活の中でも使われている製品を製造するために使用されている加工方法でもあります。

また、ワイヤーカットの特徴としては、①導電性のある材料であれば加工可能、②高精度加工が可能、③テーパー加工も可能、などが挙げられます。

>>ワイヤーカットとは?原理・仕組みから特徴まで、まとめて解説!

 

ワイヤーカットのメリット

それでは、ワイヤーカットのメリットについて解説していきます。

・導電性のある材料であれば、厚みや硬度に関係なく加工可能

ワイヤーカットは、加工時に局所的に発生する6000~7000度もの高温によって加工する方法です。一方、地球上で最も融点が高いとされている材料でも約4000度です。そのため理論上では、導電性がある材料であればどんな金属材料でも加工可能というのがワイヤーカットの大きな特長です。この特長から、ワイヤーカットは一般的な鋼板やステンレス、銅、アルミなどの材料から、超硬、インコネル、ハステロイ、さらには多結晶ダイヤモンドまで、様々な材料の加工に使用されています。

また切削加工の場合は、薄板の切断や、超硬材料の加工は非常に困難とされています。しかしワイヤーカットでは、薄板から200mm以上の厚みのある材料まで、材料の硬さに関係なく加工することが出来るのです。

このように、導電性のある材質であれば、ワイヤーカットでは材質の厚さ、大きさ、強度に関係なく加工することができるのが、大きなメリットです。

 

・極薄板の加工が可能

ワイヤーカットでは、板厚が0.01~0.05mmといった極薄板でも原理的には切断加工することができます。このような板厚の場合は、レーザー加工機やタレットパンチ(NCT)では加工することが難しいため、ワイヤーカットにメリットが働きます。

 

・高精度加工が可能

ワイヤーカットは、ワイヤー電極線と工作物が非接触のまま加工されますが、ワイヤー線の太さがφ0.05~0.3mmということもあり、ミクロンレベルという高精度加工が可能というのが、ワイヤーカットの2つ目のメリットです。

その加工精度は、同じ非接触加工であるレーザーカット加工よりもはるかに優れており、研削加工のような0.005mmレベルの精度を出すことができます。そのため、ピッチ精度が必要な順送金型部品の加工や、リングやギアの半割加工などに使用することができます。

>>ワイヤーカットによる高精度加工をするための8つのポイントとは?

 

・加工物への負荷が少ない

切削加工や研削加工のような接触加工ではなく、ワイヤーカットは放電を利用した非接触加工です。そのため、加工物への負荷はあまりかからないのが3つめのメリットです。

接触加工の場合は、接触した部分において残留応力が発生してしまいます。その分だけ変形も生じてしまい、熱変形も生じてしまいます。一方ワイヤーカットでは、加工物に接触しないために負荷は少なく、また加工液中で加工するため熱変形も微小で抑えることができます。

 

・バリが生じない

ワイヤーカットでは、接触加工では発生しがちなバリが生じません。精密部品の中には、非常に微細なバリも除去する必要があるため、接触加工の場合はどうしてもバリ取り作業の工程が発生してしまいます。しかしワイヤーカットでは、バリ取り作業を短縮することができ、結果としてコストダウンにつながります。

 

・複雑形状の加工が可能

ワイヤーカットでは、単なる直線的な切断のみでなく、円弧のような曲線形状の加工も可能です。そのため、複雑平面形状の加工にも対応できるのがワイヤーカットの5つ目の特長です。さらに、上下のワイヤーを別々に動かすことで、テーパー形状の加工をすることもできます。

 

・工具が不要

切削・研削加工のような接触加工では、刃物を用いた機械的加工によって加工物を加工します。しかしワイヤーカットでは、そのような工具は不要です。代わりに真鍮製の極細ワイヤー線のみで全て加工することができます。そのため、工具取替工程の短縮にもつながります。

 

・材料ロスが少ない

切削加工では、加工物の取り代が多く、切りくずも多く発生してしまい、その分が材料ロスとなってしまいます。しかしワイヤーカットでは、加工物を工作機械に固定するための掴み代分を確保さえしてしまえば、加工幅も小さく済むため、他の加工方法より材料ロスを少なく、無駄なく材料を利用することができます。

 

・無人運転・夜間運転が可能

ワイヤーカットは、NCプログラムによって夜間の無人運転もすることができます。そのため、加工中は他の作業に時間を当てることができます。

 

・低コストで加工が可能

ワイヤーカットで使用するのは、主に真鍮製のワイヤー電極線です。切削や研削などでは、消耗品である高価な刃物工具を使用しますが、真鍮製ワイヤーは比較的安価です。この安価な工具によって、消耗品のコスト削減につながります。

また、材料ロスが少ない分、材料費の削減にもつなげることができるため、ワイヤーカットでは材料費を節約することができます。

さらに、ワイヤーカットの場合は工具交換の手間が切削加工や研削加工と比べて圧倒的に少なく済みます。そのため、工具交換時間の短縮につながり、コストダウンにつなげることができます。

特に薄板の場合は、複数枚の板を重ねて加工することもできます。そのため、大幅な加工時間の削減につながり、コストダウン をはかることができます。

 

ワイヤーカットのデメリット

続いて、ワイヤーカットのデメリットについて解説していきます。

・加工速度が遅く、量産に不向き

ワイヤーカットでは、工作物とワイヤー線が約数十ミクロン(μm)という髪の毛ほどのわずかな距離を一定に保ちながら、数μsという非常に短い間隔で連続した放電加工がされます。しかし加工物を少しずつ溶融させながら切断する加工方法のため、切削加工やレーザーカット加工と比較すると、非常に加工速度が遅い点がデメリットとして挙げられます。ワイヤー線の水平方向の送り速度は、1分あたりに数mm程度のため、肉眼で見ても加工が進んでいるのかはわかりません。

また、導電性のある材料であれば何でも加工はできるものの、材料ごとに導電率は異なるため、金属によっては加工に数時間~数日という単位で加工時間の差が生じてしまいます。

さらに、材料の厚さや大きさによっても、加工速度は左右されてしまいます。

このように、ワイヤーカットは加工速度が遅いため、あらゆる材料の高精度加工ができるものの、量産にはあまり向いていない加工方法とも言えます。

 

・導電しない材料は加工できない

またワイヤーカットは放電加工の一種であるため、導電性のある素材では硬さや厚さに関係なく加工することができます。しかし、通電しない絶縁材料は加工することができません。

 

・底部分の加工ができない

ワイヤーカットは、ワイヤー電極線による糸鋸のような加工のため、平面の切断・切り抜き加工はできますが、底がある形状は加工することができません。底のある形状を放電加工で加工したい場合は、型彫放電加工を使用する必要があります。

 

・水平方向の加工ができない

ワイヤーカットはワイヤー電極線が上から下へという垂直方向に張られています。そのため、水平方向に加工物を切断することはできません。ただし、ある程度の角度を設けたテーパー加工であれば対応可能です。

 

ワイヤーカットの加工実績

続いて、当社が実際に加工したワイヤーカット加工による加工実績をご紹介いたします。

加工事例:製品駒
製品駒

こちらは、SKD11製の製品駒です。 加工方法としては、ワイヤーカット、放電加工、マシニングセンタといった複合加工を行っています。

>>加工実績の詳細はこちら

加工事例:製品部入子①
製品部入子①

こちらは、STAVAX製の製品部入子です。 加工方法としては、ワイヤーカット、放電加工、マシニングセンタといった複合加工を行っています。

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加工事例:製品部入子②
製品部入子②

こちらは、STAVAX製の製品部入子です。 加工方法としては、ワイヤーカット、マシニングセンタといった複合加工を行っています。

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加工事例:製品部入子④
製品部入子④

こちらは、STAVAX製の製品部入子です。 加工方法としては、ワイヤーカット、超精密マシニング加工といった複合加工を行っています。

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加工事例:金型部品⑤
金型部品⑤

こちらは、ワイヤーカットによって製作されたDH2F製の金型部品です。

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ワイヤーカット加工による複合加工とは

当社では、ワイヤーカット加工と他の加工方法を組み合わせた複合加工を可能とする加工設備を保有し、さらに複合加工を実現する加工ノウハウがございますので、お客様に高精度の加工品をご提供しております。ワイヤーカット加工による複合加工については、下記記事で詳しく解説しております。

>>ワイヤーカット加工を用いた複合加工の特徴とは?

 

ワイヤーカットなら、精密部品加工センターにお任せ!

精密部品加工センター.comを運営する株式会社長津製作所では、精密部品を中心とした様々な部品加工を多くの業界に向けて行っております。ワイヤー放電加工機から型彫放電加工機、研削加工機、マシニングセンタなど、多岐にわたる工作機械を保有しているため、あらゆる精密部品加工に対応しております。

また、ホログラム光学素子用金型などの超精密金型の設計・製作実績も多数ございます。 さらに当社では、当社工場にとどまらず、大田区や燕三条など、国内でも有数の加工集積地に幅広い加工ネットワークを築いております。これらの加工ネットワークを駆使することで、どこの会社ならできるかわからないような部品加工にも対応いたします。

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