ワイヤーカットでテーパー加工する時のポイント

製品部入子④

ワイヤーカットでは、直線や曲線といった平面加工だけでなく、工作物に角度をつけて加工するテーパー加工も可能です。そのためワイヤーカットでは、難削材の高精度複雑形状を実現することができますが、ワイヤーカットでテーパー加工をする際には、いくつか抑えておくべきポイントがあります。ここでは、ワイヤーカットでテーパー加工する時にポイントをまとめて解説いたします!

ワイヤーカットとは?

あらためて、ワイヤーカットに関する説明です。

ワイヤーカットとは、正式にはワイヤー放電加工と言われる放電加工の一種で、真鍮などのワイヤー線に電流を流して加工物を溶融させながら切断する加工方法です。ワイヤーカットの特徴としては、①導電性のある材料であれば加工可能、②高精度加工が可能 という大きな2つの特長があり、ここに③テーパー加工も可能、という特長を含めることができます。

>>ワイヤーカットとは?原理・仕組みから特徴まで、まとめて解説!

>>ワイヤーカットによる高精度加工をするための8つのポイントとは?

 

テーパー加工とは?

テーパーとは、ある物質の径や幅が先細りとなる形状の一部を指します。紙コップのような円錐形状の、側面の傾斜部が該当します。つまりテーパー加工とは、工作物を円錐形状のように先細りにする加工方法のことです。

通常ワイヤーカットでは、直線や曲線といった平面加工を主に行いますが、工作物に角度をつけて加工するテーパー加工も可能です。

 

ワイヤーカットでテーパー加工ができる理由

上記のように、通常ワイヤーカットでは直線や曲線といった平面加工を主に行います。ワイヤー放電加工機にあるX,Y,Z軸の3軸を使って加工する際は、平面加工のみとなります。しかし、X軸に平行なU軸Y軸に平行なV軸を独立して動かすことで、ワイヤー線を傾けることができます。

ワイヤー線を傾けて加工することができるため、テーパー加工や、上下を異形状に加工することができます。

これらの理由から、ワイヤーカットによるテーパー加工で製作される製品用途としては、タービン形状や、逃げ勾配がある抜き金型、金型スライド、精密部品の斜め穴あけ加工などがあげられます。

 

ワイヤーカットでテーパー加工する時のポイント

それでは、ワイヤーカットでテーパー加工する時には、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。

 

①角度を15度以上に傾けすぎない

まずは、あまりワイヤーの角度を傾けすぎないようにするということがポイントです。具体的には、15度以上傾けてしまうと、大幅に加工精度が落ちてしまいます。

ワイヤー線を傾けると、ワイヤー線とワイヤー線を支持するガイドとのこすれが大きくなってしまいます。こすれが大きくなってしまうと、ワイヤー線に振動が発生してしまい、加工面に筋が生じてしまうといった形で加工精度が低下してしまいます。また最悪の場合は、ワイヤー線の断線にもつながってしまいます。

加工精度の低下は、ワイヤー線の傾きと比例しています。そのため、ワイヤー線を傾けて高精度加工をしなければいけない場合は、その他のポイントにも気を付ける必要があります。

 

②上下のガイド間距離を適切に設定する

ワイヤーカットでテーパー加工をする際に最も注意すべきポイントは、上下のガイド間の距離を適切に設定することです。

上ガイドと下ガイドとの距離がわずかにでも変化してしまうと、角度に変化が生じてしまい、テーパー加工面の精度に大きく影響が生じてしまいます。また、ワイヤー線にたわみが生じてしまうと、加工精度の低下や、断線リスクが高まってしまいます。

 

③軟線+亜鉛コーティング

ワイヤー線は、元々ある程度の引張り強さがあるため、上下ガイドによってワイヤー線を傾けた際に、想定以上の傾斜になってしまう場合があります。また、テーパー加工を行う場合は加工面における加工くず排出性も低下するため、放電性が悪くなり、ワイヤー線の負荷が大きくなってしまいます。さらに、ワイヤー線が傾いている分だけ、ガイドとのこすれによる抵抗も大きくなります。これらの影響から、ワイヤーカットでのテーパー加工では、断線リスクが非常に大きくなります。

そのため、加工条件を下げることも1つのポイントではありますが、ワイヤー線を軟らかい線に変更するのもポイントです。ただし、軟線の場合は切れやすくなってしまうため、当社では亜鉛コーティングをした軟線を用いてテーパー加工をしています。

また、ワイヤーカットに用いられる線は、太さによっても用途が大きく異なります。

>>ワイヤーカットにおけるワイヤー線の太さの違いについて

 

④空運転をして治具への干渉がないかを確認する

ワイヤーカットでのテーパー加工は、前準備が必要になります。具体的には、空運転をして治具への干渉がないか、テストカットを行って精度面で問題がないかを入念に確認する必要があります。テストカットにより設定したプログラムとのズレを確認した場合には、補正する必要があります。

 

⑤テーパー補正治具を使用する

正確にテーブルとガイド間距離を設定し、ワイヤー線や加工条件を調整したとしても、テーパー加工では誤差が発生してしまうことも多々あります。そのような場合は、テーパー補正治具を使用する手段もあります。テーパー補正治具を使用することで、ワーク高さや角度を都度調整することができます。

 

⑥テーパー加工をせずにワイヤーカットができないかを検討する

ワイヤーカットでのテーパー加工は、ワイヤー線や加工条件に注意をしなければいけない、難易度の高い加工方法です。ワイヤーカットでのテーパー加工が有効なのは、垂直部分と傾斜部分が混ざっている場合、異なる傾斜角度の部分がある場合、タービン形状のような場合です。そうではない場合は、例えば同じ角度での穴あけ加工や切り落とし加工のみであれば、治具を用いてワークを斜めに固定して加工する方が、高精度に加工することができます。加工形状や加工精度をよく吟味した上で、本当にワイヤーカットでのテーパー加工が必要なのか、それとも別手段がないのか、という点をまずは最初に検討すべきです。

 

ワイヤーカットの加工実績

続いて、当社が実際に加工したワイヤーカット加工による加工実績をご紹介いたします。

加工事例:光学部品向け金型駒
製品部丸駒③
こちらは、SKD11製の製品駒です。 加工方法としては、ワイヤーカット、放電加工、マシニングセンタといった複合加工を行っています。外径部のテーパー部における組み合わせ部品との合わせ部分精度が求められる、非常に加工難易度が高い製品でしたが、加工時に工具の摩耗や加工面にビビり等が発生しないよう、適した工具・加工条件の選定をポイントとしております。
加工事例:下型キャビティ
下型キャビティ
SKD11製の下型キャビティです。 加工方法としては、ワイヤーカット、研削加工、マシニング加工による複合加工を行っています。サイズは40×27×20、40×25×10で、精度は±0.002~0.01で製作しております。
加工事例:製品部入子②
製品部入子②
こちらは、STAVAX製の製品部入子です。 加工方法としては、ワイヤーカット、マシニングセンタといった複合加工を行っています。 >>加工実績の詳細はこちら
加工事例:製品部入子④
製品部入子④
こちらは、STAVAX製の製品部入子です。 加工方法としては、ワイヤーカット、超精密マシニング加工といった複合加工を行っています。 >>加工実績の詳細はこちら
加工事例:金型部品⑤
金型部品⑤
こちらは、ワイヤーカットによって製作されたDH2F製の金型部品です。 >>加工実績の詳細はこちら

ワイヤーカットなら、精密部品加工センターにお任せ!

精密部品加工センター.comを運営する株式会社長津製作所では、精密部品を中心とした様々な部品加工を多くの業界に向けて行っております。ワイヤー放電加工機から型彫放電加工機、研削加工機、マシニングセンタなど、多岐にわたる工作機械を保有しているため、あらゆる精密部品加工に対応しております。
また、ホログラム光学素子用金型などの超精密金型の設計・製作実績も多数ございます。

>>当社の超精密加工サービスついて

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